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足の「人指し」指


Gaudete in Domino. Ora et labora. 主にあって喜べ! 祈れ、そして働け!
by nitonyan
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お墓参りと、老いた両親の現実

11時に、菩提寺の境内で、母と待ち合わせ
お花とお線香は、母が用意してくれていた
私は、ふたつの桶に水を入れて、ふたたび長い階段を登っていく

春のお彼岸のときには、雨が降っていたので、傘をさしながらの掃除になった
今日は、梅雨の晴れ間の、夏日まっさかりの日差しのなか、ポタポタと汗を流しながら、お墓を磨き上げた
それにしても、このお墓まで来るまでの長い階段っ
私も、いくつまで上って来れられるのか、わからない
「来れなくなったら、来れなくなったで、いいからねっ
 お墓参りに来ないからって、化けて出ることはしないからっ」
と、母は冗談まじりで言ってくれるけれど、、、、

今回は時間をかけて磨いただけあって、お墓はピカピカになった
花を生け、お線香を上げて、手を合わせた
「いつもありがとうございます
 お父さんとお母さんをよろしくお願いします
 息子のことも、よろしくお願いします」
心のなかで、そう唱えて、ふたたび長い階段を歩いて降りた

お寺の休憩所で、冷たいお茶と、同じく冷たく冷えた水羊羹をいただいた
汗びっしょりになった身体に、水羊羹の甘みがありがたかった

その後、バスを乗り継いで、実家へ向かった
途中、バスの乗り換えを利用して、デパートでお昼ご飯を買った
「お寿司がいいよね?」
という母に、
「ごめん、私はもう少しスタミナのつくものが食べたい」
そう言って、私はヒレカツ弁当を買ってもらった
退院して二日目の父には海老天丼、母は散らし寿司と、それぞれ違うものを買って帰った

四回目の抗がん剤治療を終えた父の頭には、もうほとんど毛が無かった
あれほど、色気のあった父も、今ではすっかり好々爺になってしまった
そして、とうとう父は家でも杖を使うようになっていた
最初は茶の間で広げたお弁当を、父の寝室に持って行って、一緒に食べた
母は、家に帰った途端に、これから来る予定の来客のための準備に忙しい
「少し食べない?」と、ヒレカツの一切れを父に差し出したが、
「もうお肉は食べたくないんだ」と言って、父は断った
海老天丼を半分食べたところで、父はお弁当の蓋を閉じた「残りは後で食べるよ」

ちょうど私がお弁当を食べ終わったときに、玄関のチャイムが鳴った
先日、市役所に依頼しておいた、介護保険の介護度を上げてもらうために、今日は面接の日だ

前回の面接の人とは、違う女性がやってきた
前回の面接の人は、いきなり、母を介護保険の当事者だと思い込んでしまって、なかなか父の様子を聞いてくれなくて困った経緯があったけれど、今回はまっすぐに父の寝室に入ってくれた
ところが、面接員が話しをする前に、せっかちな母が機関銃のように話し出した
「お母さんはまだ昼食をとっていらっしゃらないようなので、先に食べてきてくださいね」
面接員にそう言われても、なかなか母の口が止まらない
やっと母が、お茶を入れに立ったところで、面接員が、
「お母様はいつもあんな感じなんですか?」と怪訝そう、、、
母が対座して、やっと話しが本筋に入った

この4月から、介護保険のシステムが大きく変わった
そのために、今までの父の「要介護」のレベルでは、まったくといっていいほど利用枠が無い
ちょうど父が肺がんになったのを機会に、レベルを上げてもらうための面接だ
父の状態も、おととし血液のガンが治って退院したころよりも、ずっと悪くなっている
父の面接は順調に進んだけれど、途中、母が入ると話がややこしくなってしまう
「介護認定が降りて、ケアマネージャーと相談してプランを決めるときに、お母様だけだと心配です
 娘さんのどちらかが間に入ってあげないと、決まるものも決まらないと思います」
面接員は、母が対座している短い時間に、私にそう伝えた
そして、面接員は、何度も母に言った
「お父さんの意思を最優先して、お父さんを中心に生活してくださいね」

母の、思い込みの激しい性格は、昔からだ
私も姉も、そして父も、もう慣れてしまっているし、諦めてもいる
けれど、はじめて会う面接員には、母の性格の極端さがとても気になったのだろう
当の本人は、あいかわらず、自分に非はないと信じている
その母に世話をされる父も、もう母の話は、実はほとんど聞いていない
夫婦60年の、これが現実だ
お互いに、相手に言うことに耳をかさず、それでも同居しつづける
実際、最近の両親のあいだに、会話はほとんど無いと母から聞かされている
私たち娘が行ったときだけ、母が話し、父が話す、そんな夫婦なのだ
それでも、たとえ自分本位だとしても、母が元気で父の世話をしてくれているおかげで、私たちふたりの娘は、ほとんど生活を変えないでいられる
「お母さんが倒れないかと心配です」
面接員も、その部分はとても心配していた「まさに老々介護ですから」

私が本当に心配なのは、父の看病から、母が解放されたときだ
母のように、たとえ自分本位でも、人のために尽くすことを厭わない人は、共依存の傾向が強い
特に母は、私たちが小さいころは「子どものため」に生き、祖母が亡くなるまでは「姑のため」に生き、そして今はまさに「夫のため」にだけ生きている
だからこそ、母は、他の人がなしえないほどの苦労も乗り越えてきた
それが、誰かのために生きることしか選択の余地がなかった母の、痛ましい現実だ
いつかは、その母の現実を、私たち娘たちが背負わなければならなくなる日が、遠からず来るだろう

先日、甥の結婚式で、父の車椅子係りを頑張った息子が、家に帰ってきてからポツリと言った
「おじいちゃんの世話は楽だよ
 ちゃんと話しが通じるもの
 だけど、これが、おばあちゃんだったら、、、、オレにはできないよ」

面接員は、最後に私にささやいた
「お母さんが倒れたときのことを、今から考えておいたほうがいいですよ
 お母さんとお父さん、二人が寝たきりになる可能性も、じゅうぶんありえる話しですから」


面接員を見送り、母が朝から作ってくれた牡丹餅を食べてから、私も帰路についた
今日は、このあと、ゴスペルの練習が待っている

今はいい、、、
ゴスペルも、フラメンコも、ストーリテリングも、私には自由に思う存分打ち込める時間がまだある
今のこの時間を、無駄にしないでいこう
息子のことで悩む自由も、今の私には残っている


+神に感謝
by nitonyan | 2006-07-13 22:49 | くるぶし

「親より出世するよ」
私の母は、私にそう言い続けた

「親より出世するよ」
そう息子に言ったとたんに、はじめて私は、私の母の気持ちが理解できた

「親より出世するよ」
それは、
「親より出世してほしい」
という親の願いと、期待だった、、、

「La Postal 1日1信」

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